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職業の違い

宅地建物取引士と不動産鑑定士の違い|取引手続を担う資格と、不動産の経済価値を判定する資格

宅地建物取引士は宅地建物取引業法に基づく国家資格で、宅地建物取引業者が行う取引の重要事項説明や契約書面への記名を担い、業者には事務所等ごとに専任の宅地建物取引士の設置が義務づけられています。不動産鑑定士は不動産の鑑定評価に関する法律に基づく国家資格で、不動産の経済価値を判定し価額に表示する鑑定評価を行い、不動産鑑定業者の業務に関しては鑑定士でない者は鑑定評価を行うことができません。試験の実施者(都道府県知事と土地鑑定委員会)と登録先も異なります。

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目次を開く
  1. 01結論:取引手続の担い手か、価格を判定する専門家か
  2. 02宅地建物取引士の業務:重要事項説明、書面への記名、専任の設置
  3. 03不動産鑑定士の業務:鑑定評価と鑑定評価書への署名
  4. 04資格の仕組み:都道府県知事の試験・登録と、試験+実務修習・国の名簿登録
  5. 05間違えやすい点と選び方の目安
先に結論

この記事の答え

違いの軸は「取引の現場で契約手続を担うか、不動産の経済価値を判定して価額に表示するか」です。宅地建物取引士は宅地建物取引業法に基づく国家資格で、宅地建物取引業者(不動産会社)が行う取引について、契約前の重要事項説明や契約書面への記名といった、宅地建物取引士でなければ行わせることのできない手続を担い、宅地建物取引業者には事務所等ごとに専任の宅地建物取引士の設置が義務づけられています。これに対し不動産鑑定士は不動産の鑑定評価に関する法律に基づく国家資格で、業務は不動産の鑑定評価、すなわち不動産の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することです。不動産鑑定業者の業務に関しては、不動産鑑定士でない者は不動産の鑑定評価を行ってはならないとされています(同法第36条)。取得の仕組みも異なり、宅地建物取引士は都道府県知事が行う試験と登録、不動産鑑定士は土地鑑定委員会が行う試験に加えて実務修習の修了と国土交通大臣の確認を経て、国土交通省に備える名簿への登録が必要です。

この記事の要点

  • 宅地建物取引士の独占的な役割は、契約が成立するまでの重要事項説明と、重要事項説明書・契約書面への記名。宅地建物取引業者には事務所等ごとに専任の宅地建物取引士の設置義務がある(宅地建物取引業法第31条の3、第35条、第37条)
  • 不動産鑑定士の業務は不動産の鑑定評価(経済価値を判定し価額に表示すること)。不動産鑑定業者の業務に関しては、不動産鑑定士でない者は鑑定評価を行えない(不動産の鑑定評価に関する法律第2条、第3条、第36条)
  • 宅地建物取引士は都道府県知事の試験・登録で、登録には省令で定める期間以上の実務経験等が必要。不動産鑑定士は土地鑑定委員会の試験(短答式・論文式)に加え実務修習の修了と国土交通大臣の確認が必要で、登録は国土交通省の名簿
進め方このガイドの進め方
  1. 01結論:取引手続の担い手か、価格を判定する専門家か
  2. 02宅地建物取引士の業務:重要事項説明、書面への記名、専任の設置
  3. 03不動産鑑定士の業務:鑑定評価と鑑定評価書への署名
  4. 04資格の仕組み:都道府県知事の試験・登録と、試験+実務修習・国の名簿登録
  5. 05間違えやすい点と選び方の目安
SECTION 01

1. 結論:取引手続の担い手か、価格を判定する専門家か

どちらも不動産に関わる国家資格ですが、根拠法と制度の目的が違います。宅地建物取引業法第1条は、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、業務の適正な運営と取引の公正を確保して、購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化を図ることを目的としています。宅地建物取引士は、この取引規制の現場側の担い手です。一方、不動産の鑑定評価に関する法律第1条は、不動産の鑑定評価に関し、不動産鑑定士及び不動産鑑定業について必要な事項を定め、土地等の適正な価格の形成に資することを目的としています。不動産鑑定士は、価格形成の側の専門家です。

実務の場面で見ると違いははっきりします。不動産会社で土地や建物を買う場面では、契約前に物件や取引条件について説明する重要事項説明を行い、契約書面に記名するのが宅地建物取引士です。これに対し、土地や建物の経済価値がいくらかを判定し、価額として示す鑑定評価を行うのが不動産鑑定士で、宅地建物取引士の業務には鑑定評価は含まれません。反対に、不動産鑑定士が売買契約の重要事項説明を行うことも、法律上の役割ではありません。

  • 宅地建物取引士=宅地建物取引業法に基づき、取引の公正と購入者等の保護を担う現場側の資格
  • 不動産鑑定士=不動産の鑑定評価に関する法律に基づき、土地等の適正な価格の形成を担う資格
  • 契約手続(重要事項説明・記名)は宅地建物取引士、経済価値の判定(鑑定評価)は不動産鑑定士の領域
SECTION 02

2. 宅地建物取引士の業務:重要事項説明、書面への記名、専任の設置

宅地建物取引士は、宅地建物取引業法第2条第4号で「第二十二条の二第一項の宅地建物取引士証の交付を受けた者」と定義される国家資格です。中心的な役割は、宅地建物取引業者が行う取引の手続にあります。同法第35条は、宅地建物取引業者は契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、登記された権利の種類や法令に基づく制限など法定の重要事項について、書面を交付して説明をさせなければならないと定めています。さらに、重要事項を記載した書面への宅地建物取引士の記名と、第37条に基づき契約内容を記載した書面を作成したときの宅地建物取引士による記名も定められており、説明と記名は宅地建物取引士でなければ行わせることができません。

制度面では、宅地建物取引業者側に設置義務があります。同法第31条の3は、宅地建物取引業者は、その事務所等ごとに、事務所等の規模、業務内容等を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならないと定めています。抵触する事務所等を開設することはできず、抵触するに至ったときは二週間以内に適合させる措置を執らなければなりません。宅地建物取引士は、不動産会社の取引実務に組み込まれた資格という性格を持ちます。

  • 重要事項説明は、契約成立前に宅地建物取引士が書面を交付して行う(宅地建物取引業法第35条)
  • 重要事項説明の書面と契約内容を記載した書面には、宅地建物取引士の記名が必要(第35条、第37条第3項)
  • 宅地建物取引業者は事務所等ごとに、国土交通省令で定める数の専任の宅地建物取引士を置かなければならない(第31条の3)
SECTION 03

3. 不動産鑑定士の業務:鑑定評価と鑑定評価書への署名

不動産鑑定士の業務は、不動産の鑑定評価に関する法律第3条第1項が「不動産鑑定士は、不動産の鑑定評価を行う」と定めています。同法第2条第1項の定義では、不動産の鑑定評価とは、不動産(土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利)の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することです。また第3条第2項により、不動産鑑定士はその名称を用いて、不動産の客観的価値に作用する諸要因に関する調査・分析や、不動産の利用、取引、投資に関する相談に応じることを業とすることもできます(他の法律で制限されている事項を除く)。

独占の形は宅地建物取引士と異なります。同法第2条第2項の「不動産鑑定業」は、他人の求めに応じ報酬を得て、不動産の鑑定評価を業として行うことと定義され、不動産鑑定業を営もうとする者は、国土交通省または事務所所在地の都道府県に備える不動産鑑定業者登録簿への登録を受けなければなりません(第22条)。そして第36条第1項は、不動産鑑定士でない者は、不動産鑑定業者の業務に関し、不動産の鑑定評価を行ってはならないと定めています。成果物にも鑑定士の関与が示され、不動産鑑定業者が依頼者に交付する鑑定評価書には、その鑑定評価に関与した不動産鑑定士が資格を表示して署名しなければなりません(第39条第2項)。宅地建物取引士側と並ぶ仕組みとして、不動産鑑定士でない不動産鑑定業者は、その事務所ごとに専任の不動産鑑定士を一人以上置かなければならないとされています(第35条)。

  • 不動産の鑑定評価=不動産の経済価値を判定し、その結果を価額に表示すること(第2条第1項)。不動産鑑定士はこれを行う(第3条)
  • 不動産鑑定士でない者は、不動産鑑定業者の業務に関し、不動産の鑑定評価を行ってはならない(第36条第1項)
  • 鑑定評価書には、関与した不動産鑑定士が資格を表示して署名する(第39条第2項)
SECTION 04

4. 資格の仕組み:都道府県知事の試験・登録と、試験+実務修習・国の名簿登録

宅地建物取引士の試験は、宅地建物取引業法第16条により都道府県知事が行います(宅地建物取引業に関して必要な知識について行われ、登録講習の課程を修了した者には試験の一部免除があります)。試験に合格しただけでは宅地建物取引士にはなれません。同法第18条により、試験に合格した者で、宅地・建物の取引に関し国土交通省令で定める期間以上の実務の経験を有するもの、または国土交通大臣が同等以上の能力を有すると認めたものが、試験を行った都道府県知事の登録を受けることができ、登録を受けて宅地建物取引士証の交付を受けた者が宅地建物取引士となります(第2条第4号)。

不動産鑑定士のハードルは段階が多いことが特徴です。不動産鑑定士試験は毎年1回以上、土地鑑定委員会が行い(同法第11条)、学識及びその応用能力を判定するため、短答式(択一式を含む)及び論文式による筆記の方法で行われます(第8条)。そして不動産鑑定士となる資格(第4条)は、試験に合格した者であって、登録を受けた実務修習機関が行う実務修習(第14条の2)を修了し、国土交通大臣の確認(第14条の23)を受けた者に与えられます。資格を有する者が不動産鑑定士となるには、国土交通省に備える不動産鑑定士名簿への登録を受けなければなりません(第15条)。まとめると、試験の実施者(都道府県知事か土地鑑定委員会か)、実務に関する要件の置き方(登録段階の実務経験か、試験後の実務修習と大臣確認か)、登録先(都道府県知事か国土交通省の名簿か)が異なります。

  • 宅地建物取引士試験は都道府県知事が実施。合格後、省令で定める期間以上の実務経験等を満たして都道府県知事の登録を受け、取引士証の交付を受ける(第16条、第18条)
  • 不動産鑑定士試験は土地鑑定委員会が毎年1回以上実施し、短答式と論文式で行われる(第8条、第11条)
  • 不動産鑑定士は試験合格に加えて実務修習の修了と国土交通大臣の確認が必要で、登録は国土交通省に備える不動産鑑定士名簿(第4条、第15条)
SECTION 05

5. 間違えやすい点と選び方の目安

よくある誤解が「宅地建物取引士がいれば不動産の価格評価もできる」というものです。宅地建物取引士の法定の役割は、宅地建物取引業者が行う取引における重要事項の説明と書面への記名であり、不動産の経済価値を判定する鑑定評価は業務に含まれません。不動産鑑定業者の業務に関する鑑定評価は、不動産鑑定士でない者は行うことができないとされています。反対に「不動産鑑定士は不動産取引全般の専門家」という理解も正確ではありません。鑑定士の中心は鑑定評価にあり、売買・貸借の契約手続で重要事項説明を行うのは宅地建物取引士側の役割です。また、どちらも「不動産の資格」ですが上下関係はなく、所管する手続と法律上の役割が異なる別の資格です。

進路を考える目安は、仕事の対象の違いです。不動産会社の取引実務に入り、契約手続や顧客への重要事項説明を担いたい人は宅地建物取引士が、土地・建物の経済価値を判定し鑑定評価書として示す仕事をしたい人は不動産鑑定士が、それぞれ制度上の入口になります。取得までの道のりにも差があり、宅地建物取引士は試験合格後の登録段階で実務経験等が問われるのに対し、不動産鑑定士は試験合格後に実務修習と国土交通大臣の確認を経る必要があります。制度の確認先は、e-Gov法令検索の宅地建物取引業法(第2条、第16条、第18条、第31条の3、第35条、第37条)と不動産の鑑定評価に関する法律(第2条、第3条、第4条、第15条、第22条、第36条、第39条)です。

  • 宅地建物取引士に鑑定評価はできない。不動産鑑定士に重要事項説明の役割はない。担当する手続が異なる
  • 上下関係ではなく、取引規制の資格と価格形成の資格という別の制度
  • 確認先: e-Gov「宅地建物取引業法」「不動産の鑑定評価に関する法律」

執筆・確認情報

執筆
manapick career編集部
編集
manapick編集責任者
出典台帳の記録日
2026-10-29
確認方法
公的資料と一次情報を出典付きで整理。自動監視による資料の変化検知と、本文の正確性の確認は区別します

参照した公式情報

  • e-Gov法令検索(デジタル庁)確認日 2026-10-29/2026-10-29に条文本文を実際に開いて確認。第2条第4号(取引士証の交付を受けた者)、第16条(試験は都道府県知事)、第18条(登録には省令で定める期間以上の実務経験等)、第31条の3(事務所等ごとに専任の宅地建物取引士の設置義務)、第35条(重要事項説明と書面への記名)、第37条(契約書面への記名)を確認。
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)確認日 2026-10-29/2026-10-29に条文本文を実際に開いて確認。第2条(鑑定評価は経済価値を判定し価額に表示すること)、第3条(鑑定士は鑑定評価を行う)、第4条(資格は試験合格+実務修習修了+国土交通大臣の確認)、第8条・第11条(試験は土地鑑定委員会、短答式・論文式)、第15条(国土交通省の名簿への登録)、第36条(鑑定業者の業務に関する鑑定評価の独占)、第39条(鑑定評価書への署名)を確認。

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この記事の内容確認日:2026-10-29