この記事の答え
違いの軸は「医療的なケアを行うか、日常生活の介護を行うか」です。訪問看護師は、看護師などの国家資格を持つ看護職員が利用者の自宅を訪問し、主治医が発行する訪問看護指示書に基づいて、健康状態の観察や点滴など医師の指示による医療処置を行う仕事です。訪問介護員(ホームヘルパー)は、介護福祉士や介護職員初任者研修修了者などが、要介護者等の自宅で食事・入浴・排泄などの身体介護と、調理・洗濯・掃除などの生活援助を行います。どちらも自宅を訪問する仕事ですが、資格の種類、行うケアの範囲、関わる保険制度が異なります。
この記事の要点
- 訪問看護は看護師等の国家資格者が主治医の指示書に基づいて行う医療的ケア、訪問介護は身体介護と生活援助
- 点滴など医師の指示による医療処置は訪問看護側の仕事で、訪問介護員の業務は食事・入浴・排泄の介助と家事の支援
- 訪問看護は医療保険と介護保険の両方に位置づけられ、訪問介護は介護保険のサービスとして提供される
看護師の主なタスクの実施率(job tag)
厚生労働省job tagのタスク一覧に載る看護師の実施率です。
1. 結論 :医療的ケアか、 日常生活の 介護か
どちらも利用者の自宅を訪問してケアを提供する仕事で、同じ利用者の家に両方が入ることも珍しくありません。違いはケアの性質です。訪問看護は、看護師の法定業務である「療養上の世話」と「診療の補助」を自宅で行うもので、病状の観察や医療処置が中心になります。訪問介護は、食事や入浴といった身体介護と、調理や掃除といった生活援助が中心です。
もう一つの違いは仕事の進め方です。訪問看護は主治医の指示書がなければ始めることができず、訪問看護計画に沿って実施して主治医へ報告します。訪問介護は、ケアマネジャー(介護支援専門員)が作成するケアプランに沿って提供される介護保険のサービスです。資格の入口も、国家試験が必要な看護師と、研修の修了が入口になる訪問介護員とで大きく異なります。
- 訪問看護=看護職員が主治医の指示書に基づき医療的ケアを行う
- 訪問介護=身体介護と生活援助を行う介護保険のサービス
- 指示書を起点にする医療と、ケアプランを起点にする介護という進め方の違い
2. 訪問看護師の 仕事:指示書に 基づいて行う 医療的ケア
看護師は、保健師助産師看護師法第5条で「厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者」と定義される国家資格です。厚生労働省job tagの看護師のページでは、訪問看護ステーションの看護師は患者宅を訪問してケアを行うほか、家族への支援も行うと説明されています。訪問看護ステーションに配置される看護職員は、保健師、助産師、看護師又は准看護師です。
自宅で行うケアの中身は、job tagのタスク一覧に表れています。患者の顔色や患部の様子を観察し、健康状態や症状をチェックする(実施率96.2%)、患者の体温・脈拍・血圧を計測して、健康状態や症状をチェックする(同96.2%)、医師の指示を受けて患者に薬の塗布、注射、吸入、吸引、点滴などの処置をする(同94.2%)といった項目が並びます。医療処置には医師との関係で線が引かれており、保健師助産師看護師法第37条により、看護師等は主治の医師又は歯科医師の指示があった場合を除き、診療機械の使用や医薬品の授与など、医師等が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為はできないとされています。
- 看護師は国家資格で、療養上の世話と診療の補助が法定業務(法第5条)
- 観察、体温・脈拍・血圧の計測、指示に基づく注射・点滴などがタスクの中心
- 医療処置は主治医の指示が前提(法第37条)
3. 訪問介護員の 仕事:身体介護と 生活援助
訪問介護員は、要介護認定を受けている高齢者や、障害支援区分の認定を受けている障害のある人の居宅を訪問する介護の職種です。仕事は大きく二つに分かれます。食事、寝返りの介助、入浴、排泄、衣服の着脱などを援助する身体介護と、調理、洗濯、掃除、買物などの援助や代行を行う家事支援(生活援助)です。点滴のような医療処置はこの仕事の範囲には含まれません。
就くための資格は看護師と対照的です。訪問介護でホームヘルパーとして働くには、介護福祉士、実務者研修修了、介護職員初任者研修修了のいずれかが必要で、有していないと仕事に就くことはできません。入口は研修の修了ですが、その先には、実務経験を積み実務者研修を受講して国家試験に合格すると取得できる介護福祉士という国家資格のステップもあります。
- 身体介護(食事・入浴・排泄など)と生活援助(調理・洗濯・掃除・買物)の二種類
- 就業には介護福祉士・実務者研修修了・介護職員初任者研修修了のいずれかが必要
- 研修修了が入口で、介護福祉士がその先のステップになる
4. 保険と 進め方の 違い :医療保険と 介護保険
訪問看護には二つの保険の顔があります。一つは医療保険で、健康保険法等に基づく指定訪問看護は、訪問看護療養費・家族訪問看護療養費として支給されます。もう一つは介護保険で、訪問看護は介護保険の居宅サービスにも位置づけられています。厚生労働省の通知では、利用者が介護保険の居宅サービス(訪問看護に係るもの)の提供を受け、居宅介護サービス費の支給を受けることができるときは、医療保険の訪問看護療養費は支給されないとされており、要介護被保険者等については介護保険側が優先される仕組みです。
どちらの保険で利用する場合も、訪問看護の開始には主治医の指示書が要ります。指定訪問看護事業者は、提供の開始に際し、利用者の主治医が発行する指示書の交付を受けなければならず、訪問看護は主治医との密接な連携のもとに看護目標及び訪問看護計画に沿って行い、訪問看護計画書と訪問看護報告書は定期的に主治医へ提出されます。これに対して訪問介護は介護保険のサービスであり、要介護認定を受けた利用者に対してケアプランに沿って提供されます。同じ「訪問」でも、医師の指示書を起点にする医療系のサービスと、ケアプランを起点にする介護系のサービスという違いがあります。
- 訪問看護は医療保険(訪問看護療養費)と介護保険(居宅サービス)の両方に位置づけられる
- 要介護被保険者等が介護保険で訪問看護を受けられる場合は、医療保険の給付は行われない
- 訪問看護は指示書、訪問介護はケアプランが提供の起点になる
5. 資格の 違いと 選び方:国家試験か、 研修修了か
資格取得の道のりも対照的です。看護師になるには、高校卒業後、看護大学・看護短期大学・看護師養成所(看護専門学校など)で4年あるいは3年の専門教育を修めたのち、国家試験に合格する必要があります。なお、訪問看護師という独立した免許があるわけではなく、看護師等の免許を持つ人が訪問看護ステーションなどで働く働き方を指します。
訪問介護員は、介護職員初任者研修の修了などが入口となり、年単位の養成課程を要する看護師とは入口の形が異なります。医療的なケアに関わりたい場合は看護師の免許が、日常生活の支援を担いたい場合は介護の研修が、それぞれの入口です。両方の仕事が同じ利用者を支えることも多いため、進路を考えるときは「医療か、生活支援か」という担当範囲で分けて考えると整理しやすくなります。
- 看護師は3年または4年の専門教育と国家試験合格が必要
- 訪問看護師は独立した免許ではなく、看護師等の免許を持つ人の働き方
- 訪問介護員は研修修了が入口で、医療行為は担わない
執筆・確認情報
- 執筆
- manapick career編集部
- 編集
- manapick編集責任者
- 出典台帳の記録日
- 2026-10-29
- 確認方法
- 公的資料と一次情報を出典付きで整理。自動監視による資料の変化検知と、本文の正確性の確認は区別します
参照した公式情報
- 厚生労働省確認日 2026-10-29/厚生労働省が公開する保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)の全文テキスト。2026-10-29に第2条・第3条・第5条・第7条・第12条・第17条〜第21条・第29条〜第31条・第35条〜第39条を実際に開いて確認。
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)確認日 2026-10-29/PrintAllページの「どんな仕事?」「就業するには?」を2026-10-29に直接確認した(職業名:訪問介護員/ホームヘルパー)。
- 全国社会福祉協議会 中央福祉人材センター(福祉の仕事ガイド)確認日 2026-10-29/パンフレット「福祉の仕事」の介護職員・介護支援専門員の解説ページを2026-10-29に直接確認した。
- 厚生労働省 job tag確認日 2026-10-29/2026-10-29にPrintAllページを実際に開いて確認(occupationId=156が看護師)。訪問看護ステーションの看護師は患者宅を訪問してケアを行うこと、タスク実施率(観察96.2%、計測96.2%、医師の指示による処置94.2%)、看護大学・短大・養成所で3〜4年の専門教育と国家試験が必要なことを確認。
- 厚生労働省確認日 2026-10-29/2026-10-29に通知本文(令和2年3月5日保発0305第4号)を実際に開いて確認。看護職員は保健師・助産師・看護師・准看護師、開始時に主治医の指示書の交付を受けること、訪問看護計画・報告書を主治医へ提出すること、介護保険で受けられる場合は医療保険の訪問看護療養費は支給されないことを確認。
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この記事の内容確認日:2026-10-29