この記事の答え
違いの軸は「資格の根拠」です。公認心理師は公認心理師法に基づく国家資格で、第2条が定める4つの行為(心理状態の観察・分析、本人への相談・助言・指導その他の援助、関係者への相談・助言・指導その他の援助、心の健康に関する教育・情報提供)を業として行います。試験は文部科学大臣及び厚生労働大臣が毎年1回以上行い、合格した者が登録を受けて公認心理師となります。臨床心理士については、文部科学省の公式Q&Aが、スクールカウンセラーの選考対象として「公認心理師」と並べて「公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定に係る臨床心理士」を挙げています。つまり臨床心理士は、法律で資格そのものが定められるのではなく、資格認定協会の認定に係る資格という位置づけが国の公式文書でも使われています。
この記事の要点
- 公認心理師は公認心理師法に基づく国家資格(文部科学大臣及び厚生労働大臣が行う試験に合格し、登録を受ける)。臨床心理士は文部科学省の実施要領で「日本臨床心理士資格認定協会の認定に係る」資格と示され、根拠の置き方が異なる
- 公認心理師でない者は「公認心理師」の名称に加え、名称中に「心理師」という文字を用いることも法律で禁止されている(第44条)。「心理士」と書く臨床心理士の名称はこの制限の対象ではない
- スクールカウンセラーの選考対象として公認心理師と臨床心理士は並列に挙げられており、文部科学省は資格の有無だけでなく面接等で活動実績も踏まえて選考するよう求めている
- 心理状態を観察し、その結果を分析すること
- その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと
- 関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと
- 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと
1. 結論:法律に 基づく 国家資格か、 認定に 係る 資格か
公認心理師は、公認心理師法(平成27年法律第68号)に基づく国家資格です。同法第1条は、公認心理師の資格を定めて業務の適正を図り、国民の心の健康の保持増進に寄与することを目的としています。資格の定義、試験、登録、義務、名称の使用制限までが一つの法律の中に定められている点が特徴です。
臨床心理士については、文部科学省の「スクールカウンセラー等活用事業に関するQ&A」が、事業の実施要領におけるスクールカウンセラーの選考対象として「公認心理師」と「公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定に係る臨床心理士」を並べて挙げています。公認心理師が法律上の名称としてそのまま挙がるのに対し、臨床心理士は「認定協会の認定に係る」という形で示されており、資格の根拠の置き方が違うことが国の公式文書からも読み取れます。心理支援の現場で両者が並んで扱われる場面がある一方で、制度上の成り立ちは同じではありません。
- 公認心理師=公認心理師法に基づく国家資格。資格・試験・登録・義務・名称制限を法律が定める
- 臨床心理士=文部科学省の実施要領で「日本臨床心理士資格認定協会の認定に係る臨床心理士」と示される資格
- スクールカウンセラーなど、両者が並列に扱われる公的な場面もある
2. 公認心理師の 業務:法律が 定める 4つの 行為と 義務
公認心理師法第2条は、公認心理師を「登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者」と定義しています。その行為は、①心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること、②支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと、③支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと、④心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと、の4つです。
義務も法律で定められています。正当な理由なく業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない秘密保持義務(第41条、違反には第46条の罰則)があり、業務に当たっては保健医療、福祉、教育等を提供する者その他の関係者等との連携を保ち、支援を要する者に主治の医師があるときはその指示を受けなければなりません(第42条)。また、知識及び技能の向上に努める資質向上の責務(第43条)も定められています。
- 法定の行為は観察・分析、本人への相談援助、関係者への相談援助、心の健康に関する教育・情報提供の4つ(第2条)
- 活動分野は保健医療、福祉、教育その他の分野と法律に明記されている
- 秘密保持義務(第41条)、関係者との連携と主治医の指示(第42条)が法律上の義務
3. 臨床心理士の 位置づけ:スクールカウンセラー選考に 見る 国の 扱い
臨床心理士の公的な位置づけを確認できる代表例が、学校現場のスクールカウンセラーです。文部科学省のQ&Aによると、スクールカウンセラー等活用事業では、スクールカウンセラーによる児童生徒への心のケアのほか、スーパーバイザーの配置、教員のカウンセリング能力等の向上のための校内研修、児童生徒の困難・ストレスへの対処方法等に資する教育プログラム、スクールカウンセラーの専門性を向上させるための研修、関係機関との連絡調整を行う連絡協議会の開催などを実施でき、災害時にはスクールカウンセラーを学校へ緊急配置することも可能です。この事業で任用されるスクールカウンセラーの選考対象に、公認心理師と並んで臨床心理士が挙げられています。
同Q&Aは選考の進め方についても触れており、都道府県・指定都市教育委員会に対し、公認心理師や臨床心理士も含め、資格を有していることのみをもって判断するのではなく、面接等を通じ、候補者の学校現場での活動実績等についても十分に踏まえた上で選考するよう求めています。臨床心理士は、国の事業において心理支援の担い手として公認心理師と並ぶ資格として扱われている一方、その資格自体は認定協会の認定に係るものである、という二面性がここに表れています。
- スクールカウンセラーの選考対象として、公認心理師と臨床心理士(認定協会の認定に係るもの)が並列に挙げられている
- スクールカウンセラーの仕事には児童生徒への心のケアのほか、教員研修や関係機関との連絡調整、災害時の緊急配置も含まれる
- 選考では資格だけでなく、面接等で学校現場での活動実績も踏まえるよう文部科学省が求めている
4. 資格の 仕組み:公認心理師は 法律に 受験資格と 登録まで 明記
公認心理師の取得の流れは法律に書かれています。試験は毎年1回以上、文部科学大臣及び厚生労働大臣が行い(第6条)、試験に合格した者は公認心理師となる資格を有します(第4条)。受験資格は第7条に3つの類型が定められており、大学で必要な科目を修めて卒業し大学院で必要な科目を修めて課程を修了した者、大学で必要な科目を修めて卒業し定められた施設で定められた期間以上、観察・分析や相談援助の業務に従事した者、文部科学大臣及び厚生労働大臣がこれらと同等以上の知識及び技能を有すると認定した者です。資格を有する者が公認心理師となるには、公認心理師登録簿への登録を受ける必要があります(第28条)。
臨床心理士については、この記事で裏付けに使った文部科学省の公式文書が示すのは「公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定に係る資格である」という位置づけまでです。受験資格、試験の内容、更新の仕組みといった取得手続の詳細は、認定協会が示す案内で確認してください。本記事では、httpsで開ける一次情報で確認できなかった認定者数や大学院の数などの数値は扱っていません。名称の扱いにも違いがあり、公認心理師でない者は「公認心理師」の名称を使ってはならず、その名称中に「心理師」という文字を用いることも禁止されています(第44条)。「心理士」と表記する臨床心理士の名称は、この「心理師」の制限には当たりません。
- 公認心理師試験は文部科学大臣及び厚生労働大臣が毎年1回以上実施し、受験資格は法律第7条の3類型
- 公認心理師は試験合格後に公認心理師登録簿への登録を受けて初めて公認心理師となる(第28条)
- 臨床心理士の取得手続の詳細は認定協会の案内で確認する。本記事ではhttpsの一次情報で確認できない数値は載せていない
5. 間 違えやすい 点と 選び方の 目安
よくある誤解が「臨床心理士も国家資格」というものです。文部科学省の公式文書でも、臨床心理士は資格認定協会の「認定に係る」資格として示されており、公認心理師法のような個別の法律に基づく国家資格ではありません。もう一つの混同が「心理師」と「心理士」の字の違いです。公認心理師法第44条が制限するのは「心理師」という文字であり、臨床心理士の「心理士」は対象外です。名称が似ていても、制限の範囲は法律の文言どおりに読みます。
進路を考える目安は、目指す制度の形です。法律に基づく国家資格として、保健医療、福祉、教育等の分野で法第2条の行為を行う立場を目指すなら公認心理師が入口になります。スクールカウンセラーのように、選考対象として両資格が並ぶ現場もありますが、その場合も資格だけでなく活動実績が選考で見られます。臨床心理士を目指す場合は、受験資格や認定の手続を認定協会の公式案内で直接確認し、公認心理師についてはe-Gov法令検索の公認心理師法と厚生労働省の公認心理師法概要で制度を確認してください。
- 臨床心理士は国家資格ではなく、資格認定協会の認定に係る資格。公認心理師とは根拠が異なる
- 名称制限の対象は「心理師」の文字で、「心理士」と書く臨床心理士は対象ではない(第44条)
- 確認先:e-Gov「公認心理師法」、厚生労働省「公認心理師法概要」、文部科学省「スクールカウンセラー等活用事業に関するQ&A」、臨床心理士の手続は認定協会の公式案内
執筆・確認情報
- 執筆
- manapick career編集部
- 編集
- manapick編集責任者
- 出典台帳の記録日
- 2026-10-29
- 確認方法
- 公的資料と一次情報を出典付きで整理。自動監視による資料の変化検知と、本文の正確性の確認は区別します
参照した公式情報
- e-Gov法令検索(デジタル庁)確認日 2026-10-29/2026-10-29に条文本文を実際に開いて確認。第2条(定義と4つの行為)、第6条・第7条(試験と受験資格3ルート)、第28条(登録)、第41条(秘密保持)、第42条(連携・主治医の指示)、第44条(名称制限:「心理師」という文字の使用禁止)を確認。
- 厚生労働省確認日 2026-10-29/2026-10-29に実際に開いて確認。法の目的、4つの行為、受験資格3類型、義務、名称使用制限、主務大臣は文部科学大臣及び厚生労働大臣であることを確認。
- 文部科学省確認日 2026-10-29/2026-10-29に実際に開いて確認。A4で、スクールカウンセラー等活用事業実施要領におけるスクールカウンセラーの選考対象として「公認心理師」と「公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定に係る臨床心理士」が並列に挙げられていることを確認(ほか精神科医、大学教員等、同等と認めた者)。選考では資格だけでなく面接等で活動実績も踏まえるよう求めていること、災害時にスクールカウンセラーを緊急配置できることも確認。
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この記事の内容確認日:2026-10-29