この記事の答え
請求6,212件、決定4,692件、支給決定1,310件は同じ年度に起きた同一集団の進行表ではありません。支給決定には過年度の請求も含まれるため、単純な認定率を作らず、脳・心臓疾患と精神障害、業務災害と複数業務要因災害を分けて確認します。
この記事の要点
- 過労死等の請求6,212件、決定4,692件、支給決定1,310件
- 支給決定は脳・心臓疾患217件、精神障害1,082件などを集計
- 請求と支給決定は対象年度が一致せず、業種別件数にも就業者数の分母がない
公表内容と対象範囲
厚生労働省は2026年7月15日、令和7年度の『過労死等の労災補償状況』を公表しました。同省は、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患と、仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害について、労災保険給付の請求や決定を平成14年以降、年1回まとめています。ここでいう過労死等は、死亡事案だけでなく、法の定義に含まれる脳血管疾患、心臓疾患、精神障害も対象です。
令和7年度中の請求は6,212件で前年度より1,402件増え、決定は4,692件で377件増えました。支給決定は1,310件で5件増え、そのうち死亡または未遂を含む自殺は145件で14件減りました。ただし請求件数は令和7年度中に請求された件数、支給決定件数は同年度中に業務災害または複数業務要因災害と認定された件数です。後者には令和7年度より前の請求も含まれます。
業務災害の脳・心臓疾患は、請求1,254件、支給決定217件でした。請求のうち死亡は303件、支給決定のうち死亡は67件です。業務災害の精神障害は、請求4,958件、支給決定1,082件で、未遂を含む自殺は請求215件、支給決定76件でした。全体の1,310件には、これらに加えて複数業務要因災害の脳・心臓疾患7件と精神障害4件も含まれます。
業種別の件数では、脳・心臓疾患の請求は『運輸業、郵便業』257件、支給決定は同64件が大分類で最多でした。精神障害では『医療、福祉』が請求1,288件、支給決定292件で大分類の最多となり、その中の『社会保険・社会福祉・介護事業』は請求706件、支給決定151件でした。これは件数の並びであり、各業種の就業者数や労働時間を分母にした発生率ではありません。
精神障害の支給決定を認定基準上の出来事別に見ると、上司等からの身体的・精神的攻撃などのパワーハラスメント222件、顧客・取引先・施設利用者等からの著しい迷惑行為127件、セクシュアルハラスメント127件、仕事内容・仕事量の大きな変化113件の順でした。『出来事』は心理的負荷の強度を評価するために類型化された項目であり、同じ言葉が職場で使われたというだけで個別事案の認定を決める一覧ではありません。
公表日の新しさだけで『最新』と判断せず、調査対象、基準時点、速報か確報か、集計単位を確認します。本記事は元資料を独自に要約し、数字や文言を別媒体から転載していません。確認日は編集部が一次資料とリンクを実際に見直した日であり、ビルド日には置き換えません。
数字・事例を判断材料へ変える読み方
最初に、請求、決定、支給決定を別の列へ置きます。令和7年度に請求された事案が同年度中にすべて決定したわけではなく、令和7年度の支給決定には過年度の請求が入ります。そのため、1,310を6,212で割って『令和7年度の認定率』と呼ぶ読み方はできません。不支給を含む決定4,692件との比較も、個々の請求年をそろえたコホート分析ではない点を残します。
次に、業務災害と複数業務要因災害を分けます。複数業務要因災害は、異なる事業主の二つ以上の事業で同時に使用される労働者について、全就業先の負荷を総合評価して因果関係が認められた災害です。請求時には業務災害の請求と区別されないため、請求件数はこの区分で集計されません。請求側にない区分を後から推測して、支給決定と一対一に対応させないことが必要です。
脳・心臓疾患の支給決定を時間外労働時間別に見ると、評価期間1か月では100時間以上120時間未満の27件が最多で、2〜6か月の1か月平均では60時間以上80時間未満の48件が最多でした。一方、精神障害の支給決定では20時間未満が57件で最多、40時間以上60時間未満が55件で続きます。精神障害は出来事の心理的負荷も評価されるため、時間外労働が少ない区分の件数を『仕事と無関係』と読むことはできません。
業種・職種別表は、相談や予防で注意すべき場面を探す入口にしますが、危険度の順位表にはしません。例えば請求件数が多い業種は、そこで働く人数、制度の周知、請求行動、職務構成などの影響を受け得ます。公表資料の表に就業者数の分母はないため、『医療、福祉だから何%危険』『一般事務だから安全』という確率は計算できません。大分類と中分類を混ぜず、件数が何を数えたかだけを記録します。
前年比は受付や決定の件数が前年度からどう動いたかを示しますが、発症の原因を一つに特定しません。制度や認定基準、請求の時期が数値に関わる可能性を残し、増加をただちに職場全体の悪化、減少を安全対策の成功と断定しない読み方が必要です。死亡、自殺、未遂を含む数字は特にセンシティブであり、当事者や遺族を件数としてのみ扱わず、刺激的な見出しや職業選びの恐怖材料に使いません。
一つの指標は、労働市場や職場の一面だけを示します。前月比と前年同月比、全国と地域、平均と分布、求人側と働く側を分け、必要なら別の一次資料を組み合わせます。職業名だけで結論を作らず、実際の仕事内容、雇用形態、経験条件、勤務場所まで戻って確認するのがmanapick careerの読み方です。
この情報だけでは決められないこと
支給決定1,310件は、令和7年度に新たに1,310人が発症した人数でも、令和7年度の請求から1,310件が認められた結果でもありません。件数は保険給付の事案を数え、年度をまたぐ請求と決定を含みます。同じ人に関する扱いや表ごとの集計単位は別添の注記へ戻り、患者数、罹患率、全労働者に占める割合へ変換しません。
精神障害の時間外労働20時間未満が最多だったことから、労働時間は関係ないとも、短時間勤務なら精神障害が多いとも言えません。認定ではパワーハラスメント、顧客等からの著しい迷惑行為、仕事量の大きな変化など類型化された出来事も扱われます。集計表は各事案の全経緯を示さず、ある出来事があれば自動的に支給されるという判定表ではありません。
業種別・職種別の最多件数は、その仕事に就くべきでないという結論や、他の仕事なら安全という保証にはなりません。就業者数、企業規模、雇用形態、勤務時間、報告・相談の仕組みなどをそろえた率ではなく、全国の個別求人の残業、夜勤、人員配置、支援体制も示しません。職業名で候補を消すのではなく、応募先ごとの実際の運用を確認します。
この年次統計だけで、現在の体調、労災認定の見込み、法的な手続、退職の要否を判断することはできません。健康や安全に差し迫った懸念がある場合は、統計を読み続けることを優先せず、医療、労働安全、労災手続など目的に合う専門窓口へつなぎます。記録が十分でないことを本人の責任と決めつけず、支援者と相談しながら事実を整理します。
調査結果は、個人の適性、採用可能性、転職成功率、将来の賃金を保証しません。割合が高い項目を人気職業やおすすめ順位へ変換せず、少数派の回答を失敗とも扱いません。制度、求人条件、製品仕様は変わるため、応募、契約、受講、購入の直前には必ず公式情報を再確認してください。
次に確認する三つの行動
公表ページの定義を読み、手元のメモを『令和7年度中の請求』『令和7年度中の決定』『令和7年度中の支給決定』の三列に分けます。脳・心臓疾患、精神障害、業務災害、複数業務要因災害も別行にし、比較できない空欄を推測で埋めません。前年比の横には増減の方向だけでなく、同じ集計定義かを別添表で確認した印を残します。
自分の職場を点検する場合は、病名や認定可能性を自己診断する表にせず、勤務開始・終了、休憩、業務量の変化、複数就業先の時間、相談した日時、具体的な言動など、後から確認できる事実を無理のない範囲で記録します。個人の端末や共有先の安全を確かめ、健康情報や第三者の個人情報を公開サービスへ入力しないことも記録方法の一部です。
求人を比べる場合は、業種名の件数だけで除外せず、時間外労働の見込み、夜勤・交替制、繁忙期、人員配置、顧客対応、業務変更の伝え方、相談先、休業や復帰の支援を同じ質問で確認します。『残業なし』の一語だけでなく、持ち帰り業務、連絡待機、記録時間、複数拠点の移動が労働時間へどう扱われるかを質問欄へ置きます。
集計を読んで不安が強くなったときは、数字をさらに集める前に、今困っていることを健康、安全、勤務記録、職場の対応、手続の五つへ分けます。差し迫った健康・安全の問題を最優先にし、それ以外は相談先へ持参する事実を一枚に整理します。応募や退職を即断するのではなく、今日確認する一項目と、専門家へ相談する必要がある項目を切り分けます。
最初に元資料の調査概要と注記を読み、次に自分が検討する職種・地域・働き方の条件へ絞り、最後に一つの小さな確認行動を決めます。不安を煽る期限、根拠のない希少性、連続閲覧を促す報酬は使いません。記事を閉じても、確認した出典と次の行動が手元に残ることを優先します。
自分の条件へ置き換える判断メモ
判断表の上段には全国集計を置き、『集計年度』『請求』『決定』『支給決定』『対象となる疾病区分』『過年度請求を含むか』『分母の有無』を書きます。下段には自分が確認する職場条件を置き、『実労働時間』『休憩』『業務量の変化』『顧客対応』『相談経路』『複数就業先』を並べます。全国の件数から個人の認定見込みへ矢印を引かず、集計が示す注意点と個別に集める事実の間を明確に空けます。
候補職場Aで残業時間は示されるが繁忙期の業務量が不明、候補職場Bで夜勤回数は分かるが相談経路が不明、現在の職場では時間より顧客対応後の支援が課題、というように、不明点を業種の印象ではなく運用へ置き換えます。資料中の最多業種や最多職種は質問を作る参考にとどめ、件数が少ない分類を安全と評価しません。確認できた条件、確認できない条件、誰に聞くかを候補ごとに残します。
持ち帰る結論は『危険な職業ランキング』ではなく、勤務実態を記録する、職場へ一項目質問する、健康・安全の相談を先にする、複数就業先の負荷をまとめる、今は判断を保留する、のいずれかです。支給決定の数字は被害や困難を軽く扱う材料にも、恐怖をあおる材料にも使いません。自分や他者の経験を統計へ無理に一致させず、必要な支援と確認行動へつなぐための背景情報として扱います。
執筆・確認情報
- 執筆
- manapick career編集部
- 編集
- manapick編集責任者
- 最終確認日
- 2026-07-23
- 確認方法
- 公的資料と一次情報を独自に整理し、公開前に人が主張とリンクを確認
参照した公式情報
- 厚生労働省確認日 2026-07-23/請求と決定は同じ年度に提出・処理された同一集団ではない。件数に就業者数の分母はなく、業種・職種別の発生率や個別事案の認定可否へ置き換えない。
誤りにお気づきの場合は訂正窓口へお知らせください。確認中は一時非公開または確認中表示へ切り替えます。
この記事の内容確認日:2026-07-23